石井だより

2025年05月01日

連載 家庭医療のお話⑪ 患者中心の医療の方法(1)(石井だより5月掲載)

これまでの連載では、「家族志向のケア」をテーマに、家族とともに治療を進める大切さについてお話ししてきました。今回からは、「患者中心の医療の方法(Patient-Centered Clinical Method)」についてお伝えしていきます。家庭医療/総合診療では、日々の診療の中で、病気だけを見るのではなく、「患者さんその人を診る」とことを大切に考えています。その考え方を具体的な方法にまとめたのが「患者中心の医療の方法」です。患者さんの体の症状だけでなく、心の状態や生活背景、大切にしている価値観なども含めて全体を理解し、患者さんと医療者が一緒になって治療方針を決めていくことを目指します。

 

◆「患者中心の医療」はどんな方法?

「患者中心の医療の方法」は、大きく次の4つの構成要素で構成されています。

 

1.健康、疾患、病気の経験を探る

 患者さんの症状や医学所見、どのように病気を感じているか、本人にとっての健康観など、幅広く丁寧に聞き取り、病気の全体像を探ります。

2.全人的に理解する

 生活環境や家族構成、文化的価値観など、患者さんの背景を知ることで、治療をより適切に考えることができます。

3.共通の理解基盤を見出す

 医師が一方的に診断や指示をするのではなく、患者さんと一緒に何が問題かを整理し、治療の内容や目標について、患者さんの考えや希望を尊重しながら、医療者と一緒に決めていきます。

4.患者-医師関係を強化する

 信頼関係を築き、何でも話せる関係をつくることで、治療がより良い方向に進みます。

 

◆医者と患者さんが一緒に考える医療

患者中心の医療とは、医師が患者さんのことを理解して治療などを提案する一方向の医療ではなく、患者さん自身も自分に合った治療を医師と一緒に考える双方向の医療です。私達はこうした「患者中心の医療の方法」を土台として、日々の診療を行っています。皆さんの思いや希望を大切に、より良い医療を一緒につくっていきたいと思っています。  

次回から、4つの要素について少しずつお伝えしていきます。