石井だより
2025年03月10日
連載 家庭医療のお話⑨ 家族志向のケアの4つの原則その3(石井だより3月 掲載)
前回は、「家族という枠組みの中で患者さんの医療に焦点を当てる」ことの大切さについてお話ししました。今回は、家族志向のケアの3つ目の原則、「患者・家族と医療者がケアのパートナーである」ことについて考えてみたいと思います。
医師・患者・家族の三角関係
医療は、医師と患者だけの1対1の関係で成り立つものではなく、「医師、患者、家族」の3者が協力し合う関係が理想的です。家族志向のケアでは、これを「治療的三角形」と呼びます。
患者さんの病気に対する考え方や治療の受け入れ方、家族の中での役割などは、患者さんの症状に何らかの形で影響を及ぼしています。家庭医は、(診察室にいなくても)患者さんの家族を「医療のパートナー」として捉え、治療の計画を一緒に考えたり、関わってもらうことで、より良い結果につながるのです。
【事例】糖尿病の治療を家族とともに進める
例えば、糖尿病の患者さんが通院しており、1日1回、朝食後に血糖を下げる薬を処方していたとします。しかし、一向に血糖値は改善しません。患者さん本人は「ついつい薬を飲み忘れてしまう。次からはちゃんと飲むから」と毎回のように言っていました。
そこで、ある日の診察で奥さんにも一緒に来てもらい、どうすれば薬を忘れずに飲めるかについて話し合いました。
話を聞いてみると、奥さんも毎日薬を飲んでいるが服用するのは夕食後であること、朝食と昼食は夫婦それぞれバラバラに食べているが、夕食は必ず一緒にとる習慣があることが分かりました。そこで、患者さんの服薬時間を朝食後から夕食後に変更したところ、奥さんが毎晩声をかけるようになり、飲み忘れが減りました。その結果、血糖値のコントロールも改善したのです。
まとめ
このように、家庭医療では、家族を大切な「資源」と考え、治療を進めるうえでの協力者として活用することを重視しています。
✔ 家族の協力が、治療の継続や生活習慣の改善につながる
✔ 家族の状況を知ることで、より適切な治療プランを立てられる
✔ 医療は「医師と患者の1対1」ではなく、「医師・患者・家族」の3者で進めるもの
次回は、家族志向のケアの4つ目の原則、「医療者は治療システムの一部として機能する」についてお話しします。どうぞお楽しみに。