石井だより
2025年02月01日
家庭医療のお話⑧ 家族志向のケアの4つの原則その2(石井だより2月掲載)
前回、家族志向のケアの4つの原則(1)「病気を心理社会的広がりで捉える」についてお書きました。今回は、2つ目の「家族という枠組みの中で患者の医療に焦点を当てる」という視点について解説します。次の4つの要素があります。
① 家族は患者の健康に関する考えや行動を決定づける
家族の価値観や生活習慣は、患者さんの健康行動に大きく影響します。例えば両親が好んでいた食生活を、大人になった自分も好んでいたりするものです。
② 家族ライフサイクルの移行期にはストレスが身体症状としてあらわれる
家族は、結婚、子育て、子供の巣立ち、介護など、時間とともに変化する「ライフサイクル」を持っています。特に、こうした移行期には、ストレスが高まり、身体症状として現れたり、逆に移行期が過ぎ去れば症状が良くなったりすることがあります。
③ 身体症状は家族の機能を保つために存在することがある
家族の中での役割や関係性が影響し、ある種の「身体症状」が家族のバランスを保つために現れることもあります。(例)子供が喘息発作を起こすことで夫婦喧嘩を止めさせることがある。
④ 家族は患者にとって貴重な「資源」であり、治療の強力なサポートとなる
家族は、時に病気のリスク要因となることもありますが、逆に「治療の最も頼もしいパートナー」にもなり得ます。「家族のサポート力」を最大限に活かすことを重視します。患者さんだけでなく、家族と一緒に治療方針を考え、協力体制を築くことが、より良い医療につながるのです。
このように、家庭医療では、患者さんを個人単独として捉えるだけでなく、「家族の中の一員」として捉えることが、症状の理解や解決に役立ちます。