石井だより
2024年12月06日
連載「家庭医療のお話⑦ 家族志向のケアの4つの原則その1」(石井だより12月掲載)
前回、家族志向のケアには、4つの原則があると紹介しました。
①病気を心理社会的広がりで捉える
②家族という枠の中での患者に焦点を当てる
③患者・家族と医療者がケアのパートナーになる
④医療者は治療システムの一部として機能する
今回は、①について説明します。
(具体例)しょっちゅう喘息発作で救急受診する小児患者がいました。発作の心当たり尋ねてもはっきりせず、いくら薬を変更しても回数は全く減りませんでした。ある日、母親自身のストレスを尋ねると最近夫婦喧嘩が増えているとの事。そして改めて考えると、喧嘩した日に発作が多かったのです。両親の喧嘩が子どものストレスとなりそれが発作の大きな原因になっていたのでした。この事実に気づいた両親は話し合いをして喧嘩を減らすことで喘息発作の回数も次第に減っていきました。
「家族志向のケア」は家庭医にとって最も基本的な考え方の一つである「生物心理社会モデル」(6月の石井だよりで紹介)に基づいています。
医師は時として内臓や細胞など身体の中に目を向けるあまり、患者さんの心・感情や、社会的背景に目が向かなくなってしまい、問題の本質に気づかず症状が長引いてしまう事があります。しかし心理面(精神的ストレスや本人の考え方)や社会面(家族、友人、職場、文化)に目を向けることで解決の糸口が見えてきます。特に家族は、最も基本的な社会グループの一つであり、病気や健康に計り知れない影響を持ちます。家族は時として病気の原因にもなり、時として最もよく効く薬にもなります。
病気を「生物心理社会モデル」で考えると、「家族」はいかに重要か見えてくるのです。