石井だより
2024年06月01日
連載「家庭医療のお話②」(石井だより6月掲載)
ちょっと理屈っぽいお話になってしまうかもしれませんが、家庭医療学の、とても大切で基本となる考え方を紹介します。
それは、生物心理社会モデルです。これは、患者さんの健康問題をどう捉えるかという考え方の一つで、「病気は内臓や組織の異常で生じる」という生物医学モデルと対比されます。
症状や問題を、単に生物学的問題(=身体の病気)と捉えるのではなく、心理的側面(=精神的ストレスや心理状態、本人の考え方など)や、社会的背景(=家族関係、友人関係、職場関係、文化など)がお互いに影響しあって生じているものと考え、問題解決のために多方面から総合的に取り組むという考え方です。
つまり、健康や病気を「身体」だけでなく「心」や「環境」も大きく影響しているという事です。当たり前の事のようですが、医学が進歩して専門的になってきた現代は、どうしても「生物学的」な面にこだわってしまいがちです。
もちろん、医学的な異常を見つけて治療することは大切です。しかし検査をしたけど異常がない、薬をのんでいるけどイマイチすっきりしないなど、生物医学モデルだけで解決できない問題を解決できるかもしれません。
次回は、生物心理社会モデルで取り組んだ具体例を紹介したいと思います。